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食品サンプルのパイオニア「郡上八幡」で、風変わりな食の楽園を満喫しましょう!

郡上八幡は岐阜県にあるのどかで風光明媚な街で、迷路のように入り組んだ伝統的な町並みから「小京都」とも呼ばれています。この素朴な風景を持つ街には、大阪や金沢といった伝統的なグルメの中心地にも引けを取らないエキサイティングな食文化が広がっています。また、日本のプラスチック製食品サンプルの発祥の地でもあり、清らかな水が流れる川や運河が縦横無尽に張り巡らされていることでも知られています。食品サンプルのアイスクリーム作りに挑戦するなど、郡上八幡の食と文化に触れてみましょう!

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郡上八幡の食と伝統、サイクリングを楽しもう

7月初旬の雨の週末、私たちは岐阜県の山間部の鬱蒼とした森を抜け、郡上八幡に向かいました。新型コロナウイルスの影響で2020年から中止されていましたが、ついに3年ぶりに復活した伝統的なお祭り「郡上おどり」を見るためです。賑やかな名古屋から来た私たちを出迎えてくれた、静かで素朴な郡上八幡駅前の風景は、私たちがいかに遠いところからやってきたかを教えてくれ、そして爽快な冒険心を与えてくれました。郡上八幡には一体何があるのだろうと期待に胸を膨らませて、このあまり知られていない日本の奥地の風景を発見し、現地の食べ物を味わい、伝統を受け入れることにしました。

郡上八幡の歴史

郡上八幡は、16世紀に戦国武将・遠藤盛数によって築かれた城下町が起源です。吉田川と長良川の強い流れが天然の堀を形成することで、外敵からの防御がしやすくなる地形であったことから、この地が選ばれたそうです。郡上八幡城下は、名古屋から日本海側へ向かう旅人の中継地として栄え、芸術家や料理人、工芸職人、商人などが集まり、豊かな地域文化を形成していきました。

郡上八幡は、1652年の大火で焼却後、水路を整備してポンプや蛇口を設置し、町民の飲料や洗濯、消火のために利用されました。現在でも、町のあちこちにある水槽には清水が湧き、暑い夏を涼しく過ごすことができます。

郡上八幡の最大の魅力は、なんといっても400年の歴史を持つ「郡上おどり」。日本一長い盆踊りと言われ、その親しみやすい雰囲気は多くの人に親しまれ、全国各地から観客を集めています。待ちに待った2022年の郡上おどりについては、こちらの記事で詳しくご紹介しています。

郡上八幡の楽しみ方

郡上おどり以外の時間に、私たちは郡上八幡の町並みを徒歩や自転車で散策し、路地裏の隠れたレストランやカフェ、伝統的な工房、お寺などを探しました。郡上八幡の魅力を存分に味わうには、やはりゆっくりと散策することが欠かせません。忘れ去られた行き止まりや、地元の隠れた名店など、古き良き日本の美学を愛する人なら、きっと至るところで何か発見があるはずです。

さんぷる工房:食品サンプルの世界を発見し、自分だけの食品を作ろう!

郡上八幡で最も異彩を放っているのが、「食品サンプル」との深い関わりです。食品サンプルとは、料理や飲み物をリアルに再現したもので、レストランのメニューを立体的に再現する模型のようなものです。郡上市は人口4万人ほどの小さな街ですが、日本の食品サンプルの半分以上を生産しており、この地域で最も大きな産業の一つとなっています。郡上八幡出身の岩崎瀧蔵は、食品サンプルのパイオニアであり、その斬新な製品は、瞬く間に全国のレストランの注目の的となりました。

郡上八幡駅から徒歩15分のところにある「さんぷる工房」を訪れ、この地域の工芸品作りを間近で体験してみました。ここでは「サンプル作り体験」で自分だけの食品サンプルを作ることができ、コースによって20~60分ほどで完成します。

天ぷらとレタス、スイーツタルト、溶けるアイスクリームのスマートフォンスタンドの3種類の製品作り体験があります。多くのサンプルは完成までに技術と時間を要しますが、この3つは、意外に素早く簡単に、備え付けのガイドブックを見ながらスタッフの手を借りることなく完成させることができます。日本語のガイドブックのみですが、画像付きなのでわかりやすいですよ(上図)。

私たちが選んだのは、紙コップから溶けたアイスクリームがこぼれるデザインのスマートフォンスタンドです。色を決めたら、アイスクリームカップの中で化学薬品が熱を発するまで混ぜ、慎重に傾けて流出させました。色が変わって固まったところで、木製のスプーンを液状プラスチックの中に入れ、自立できるまでしっかり固定しました。数分後、プラスチックは固まり、世界にひとつだけのスマートフォンスタンドが完成しました。

ワークショップの後、併設されたサンプル工場でプロの技を目の当たりにし、匠とアマチュアの差をまざまざと見せつけられました。米粒やラーメンの麺をひとつひとつ手作業で作るなど、細部にまでこだわった展示が多く見受けられました。その後、ショップでプロが作った食品サンプルを選んでお土産として購入しました。これにはキーチェーンやマグネットが含まれており、寿司やイチゴ、さらにはビールなどの食欲をそそるものばかりです!

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郡上八幡の味を堪能する

プラスチック製ではありますが、さんぷる工房のレプリカは食欲をそそります。幸いなことに、郡上八幡には実際に食べられるものもたくさんあります。狭い通路の迷路にはお腹を空かせた旅行者の食欲をそそるグルメとの出合いが詰まっています。

そばの平甚:新鮮なそばを堪能したいならここ!

郡上八幡の特徴は、流行よりも、質が高くて体に優しい料理を優先するような、地に足の着いた飲食店が多いこと。吉田川のほとりにある「そばの平甚」は、その典型的な例です。

郡上八幡の食の旅は、町の中心部にある「そばの平甚」からスタートしましょう。窓際の席から見える川の景色は最高です。写真入りの英語メニューもあるので、海外からの旅行者も注文しやすいですよ。

地元や国産の食材を使ったそばと、岐阜が誇る飛騨牛、そして季節の風物詩として親しまれている自然薯と卵までついていてボリューム満点。これらの料理は、「飛騨牛自然薯ランチ」のセットで提供されるので、どちらを選ぶか迷うことはありません。

冷製で注文した蕎麦は、コシと弾力があり、食べ応えのある食感と滋味深い味わいが特徴的でした。郡上の名水と厳選された国産そば粉を使用し、常に打ち立てを提供しているとのこと。たっぷりと盛られた飛騨牛は香ばしく食べ応えがあり、「和牛」の名にふさわしい上質なものでした。自然薯は、粘々とした食感で少し苦手な方もいるかもしれませんが、「そばの平甚」の自然薯はまろやかで心地よい味わいでした。

お抹茶処 宗祇庵:レトロな和風デザートが楽しめる甘味処

ボリューム満点のランチの後は、デザートでお腹を満たそうと、「そばの平甚」から徒歩1分のところにある「お抹茶処 宗祇庵」へ。石畳の坂道を下ったところにあるこの店は、古き良き日本を体現しているような、ノスタルジックな店です。明治時代に流行した、畳の部屋と洋風の豪華な装飾が融合した店内は、アットホームな雰囲気が漂っています。

すべてのメニューが味覚を誘惑し、デザートをひとつに決めるのは至難の業でした。ほうじ茶ゼリー、抹茶プリン、抹茶アイス、あんこ、白玉団子が重なり、浴衣姿で郡上おどりをする女性の抹茶アートがトッピングされた「宗祗庵パフェ」は、この地域を最も象徴するスイーツです。一口ごとに感動があり、会話も途切れ、最後の一口まで恍惚の表情を浮かべていました。季節によって、イチゴと桜のシロップを使用した春パフェや、栗きんとんを使用した秋パフェもあるそうです。

その他、最高級の和三盆糖と地元産の抹茶を使った「和三盆抹茶ラテフロート」や、郡上八幡城の壮大さをイメージした夏限定の巨大な抹茶味のかき氷「天空の城」もおすすめです。お腹が空いていないときには、地元の清らかな水から淹れたばかりの抹茶をホットでもアイスでも味わえますよ。

新橋亭:夏の味覚「鮎」を味わえる食事処

郡上八幡の旬の名物といえば、夏の郡上おどりの時期に地元の川で獲れる香魚「郡上鮎」。この時期に訪れると、近くの川で腰まで水に浸かって流されまいとする、熱心な釣り人の姿を目にすることができます。

郡上八幡の鮎料理を提供する店の代表格といえば、吉田川のほとりにそびえ立つ「新橋亭」です。私たちが郡上八幡を訪れたのは真夏だったので、当然のように「郡上天然鮎定食」を注文。この定食についている3匹の鮎は、それぞれ別の調理方法で味付けされています。

写真の手前の鮎は、素焼きで濃厚な味噌がたっぷりとつけられています。その後ろの鮎は塩焼き、一番奥の鮎は揚げと、3通りの食べ方ができる贅沢な定食です。

少し抵抗がある人もいるかもしれませんが、鮎の骨は柔らかくて、頭も含めて丸ごと食べられますよ!味噌、塩、衣の下には苦みがあり、ダイナミックな口当たりになります。何より鮎の新鮮さが際立っていて、私たちはこのボリュームのある定食に満足しました。

夏から中秋にかけては「郡上天然鮎定食」、秋には産卵のために川を下る「落ち鮎」料理も味わえます。それ以外にも、自慢の一品である飛騨牛を自分で鉄板の上で焼くことができる「篝火定食」もおすすめです。

松葉屋:ボリューム満点の中華そば

翌日の昼食は、素朴な雰囲気の老舗「松葉屋」で中華そばをいただくことにしました。この店の自慢は、旨味のあるあっさりとしたスープで作られる中華そばです。

1914年に創業、現在は4代目店主が切り盛りする「松葉屋」は、さまざまな食の流行がある中でも、滋味深い、地元の人たちに信頼される味を提供し続けています。私はお腹が空いていたので、ラーメンの上に大きなエビ天が乗った「天ぷら中華そば」を注文しました。天ぷらは、外側のサクサク感と中のジューシーさのバランスがよく、出汁は濃厚で味わい深くも、最後の一滴まで美味しくいただける絶妙な軽さでした。

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長良川サイクルクルーズで、郡上八幡を巡る

郡上八幡の食を堪能した後は、郡上八幡の森や川、町の中を自転車で巡る「長良川サイクルクルーズ」。路地が入り組んだ郡上八幡をもっと深く知りたいと思い、「城下町コース」を体験しました。

大通りを横切り、路地を抜けると、ゲストハウス、レストラン、バー、カフェ、土産物店、浴衣の製造会社など、魅力的な店が並んでいます。

「やなか水のこみち」という水路沿いの石畳の道には、美しいターコイズブルーの石を使ったコンクリート製の噴水がありました。2段に分かれた水槽は、上段が水源から直接水を受けて汚染を防ぐため飲料用に、下段が食器や衣類などを洗うために活用されています。そして、食器を洗った時の残飯は水路に流れ込み、水路の中を泳ぐ色鮮やかな鯉の餌となるのです。この独創的で伝統的なシステムは町のあちこちで見ることができるため、私たちは常に飲み水がそばにありました。小京都と並んで、郡上八幡が「水の都」と呼ばれるのもうなずけます。

1606年に郡上八幡城主・遠藤慶隆が創建した由緒あるお寺「慈恩禅寺」にも行きました。このお寺の中心は内庭で、広々とした畳敷きの縁側からその壮大な姿を眺めることができます。楓の木立、苔むした地面、滝の流れる池に魅了され、私たちは思わずゆっくりと畳の上でくつろぎました。

長良川サイクルクルーズの最後を締めくくるのは、「団子茶屋 郡上八幡」。こちらのお店は、間口が狭く廊下が細長い典型的な町家で、郡上産のお米で作った団子に特製の甘辛い醤油だれを塗った「みたらし団子」の専門店です。

以前に食べた団子の味と食感にがっかりした経験があったので、期待はしていませんでした。しかし、その優しい甘みとモチモチとした食感は以前食べたものとは別物で、2本あった団子はあっという間になくなり、新しいお気に入りのおやつになってしまいました。私たちはこの美味しい団子を、夏の風物詩である梅ジュースと一緒に堪能しました。

小京都を超える見どころが満載!郡上八幡へ

郡上八幡は、お城やお祭りだけでなく、定番から風変わりなものまで、たくさんのグルメがある街です。2日間の滞在中、私たちは新鮮なそば、レトロなデザート、旬の川魚、ボリュームたっぷりの中華そば、ふわふわの団子などを、数十か所ある路地裏の湧き水と合わせて味わいました。さらに、魅力的な食品サンプルの世界に飛び込み、レンタサイクルでのどかな街を散策し、素晴らしいお寺の庭園でくつろぎのひとときを過ごすことができました。郡上八幡は小さな街なのに、「小京都」の通称では表せないほどの、食、歴史、文化、体験の宝庫です。

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ライター紹介

Steve
Steve Csorgo
オーストラリアのメルボルンで生まれ育ち、現在は新潟市在住。趣味は、地酒を見つけること、読書、そしてできるだけ多くの日本国内を旅すること。日本の好きなものは、温泉、史跡、手つかずの自然。伝統工芸品、風変わりだが魅力的な町、興味深い地元の話などを書くのが好き。
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