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野菜江戸前寿司コースを堪能: 東京スタイルの寿司のユニークな楽しみ方
寿司は最も有名な日本料理の一つです。本格的な寿司を味わいに日本を訪れる人は多いですが、種類やお店が多すぎて、どこに行ったらいいのか、またとない特別な機会を誰に任せたらいいのか迷ってしまうかもしれません。今回の「Culture of Japan」シリーズでは、新進気鋭の寿司職人、平井謙一郎さんに、東京独自の寿司スタイルである「江戸前寿司」の素晴らしさと、日本の新鮮な野菜と魚介類を組み合わせた洗練された寿司コースという独創的なアレンジを紹介してもらいました。ライフスタイルや好みに合わせてカスタマイズできるので、ベジタリアンやビーガンの方にもおすすめです。
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*この記事を掲載して間もなく、鮨 波残は残念ながらこの「野菜江戸前寿司コース」の提供を終了しました。現在も通常の江戸前寿司メニューは提供しており、英語で予約できる寿司作り体験も開催中です。
「鮨波残」の江戸前寿司で歴史を味わう
六本木のガラスと鉄の近代的なビル群に囲まれた静かでエレガントな街、西麻布。この地で江戸前寿司店「鮨波残」を営む大将の平井謙一郎さんが、何百年も続く江戸前寿司の伝統と、これまで見たことのない野菜と寿司の組み合わせを取り入れた素晴らしい料理を紹介してくれることになっていました。
本格的な寿司店では初めから寿司にわさびが入っていることが多いので、わさびなどの辛いものが苦手な私たちは今まで高級寿司店に行くのをためらっていました。しかし、鮨波残のメニューは客の好みや、食事制限、アレルギーなどを考慮して作られ、事前に予約フォームに要望を記入することができると知り、迷わず江戸前寿司コースを予約しました。ついに贅沢な寿司を体験し、新しい寿司の世界を垣間見ることができると楽しみにしていました。
ドアを開けて鮨波残の店内に着席すると、西麻布の上品な街並みにマッチするシンプルな内装に目を奪われました。無垢材のカウンター、清潔感のある白い壁、そして漢字の書画が、落ち着いて洗練された雰囲気を醸し出しています。
テーブルの上には、コースで出される料理のお品書き(英訳付き)が置かれており、魅力的な食材とその組み合わせが紹介されています。このお品書きを見て私は大将自身から鮨波残の料理と江戸前寿司の魅力について、聞きたくなりました。
江戸前寿司とは?江戸前寿司の歴史とその特徴
江戸前寿司の独自性は、寿司そのものの歴史と進化に関係しています。
「江戸前寿司と一般的な寿司の大きな違いは、江戸前寿司の 「シャリ」 (寿司飯) には「赤酢」 が使われ、「ネタ」には仕込みがされていることが多いのに対し、一般的な寿司はシャリの上に生のネタを乗せて出されることです」と平井さんは説明します。
寿司には1200年もの歴史があると言われていますが、昔から今のような形だったわけではありません。元々は蒸した米に麹菌を混ぜて発酵させ、魚を覆って保存するためのもので、実際に食べるものではありませんでした。「なれずし」と呼ばれるこのタイプの寿司はどちらかというと漬物に近く、奈良時代(710年~794年)には貴族の食卓に上る珍味とされていました。
室町時代(1336年~1392年)に入ると、熟成期間を短くしてご飯も一緒に食べる「生なれずし」になり、江戸時代(1603年~1868年)中期には庶民の間にも寿司文化が広まりました。
当時の江戸(現在の東京) には労働階級を中心に100万人以上の人々が生活しており、手早く食事を済ますことができる屋台料理は人気があり、寿司もその一つでした。その高い需要に応えるため、売り手は寿司を手早く調理し、ネタの可食期間を延ばす様々な工夫をしなければなりませんでした。そこで、魚を塩漬けや醤油漬けにしたり、酢飯が長く持つように赤酢を使ったりするようになったのです。赤酢は味と香りが強く、塩漬けされたネタを完璧に引き立てます。
江戸前寿司は、江戸湾(現在の東京湾)で獲れた魚介類のみを使用することから、「江戸の前で獲れた寿司」すなわち「江戸前寿司」と呼ばれるようになりました。
鮨波残が極上の食体験を提供できる理由
必要性から生まれた独創的なおいしさ。江戸前寿司の誕生にまつわる話を聞き、その技法に新たな敬意の念を覚えるとともに、一つひとつのネタやそれにかける手間をありがたく思うようになりました。しかし、鮨波残の江戸前寿司の素晴らしさは、このような歴史的背景にとどまるものではありません。季節感にこだわった意外な組み合わせ、職人との一体感など、鮨波残の野菜江戸前寿司コースは、まさに唯一無二のものだと実感しました。
日本の四季を感じる
寿司といえば魚介類を思い浮かべますが、平井さんは「これまでにない味、食感、香りを楽しめるものを作りたい」と語ります。「寿司は魚ばかりだと飽きてしまいます。以前働いていた寿司屋にはビーガン寿司のメニューがありました。そこで、魚と野菜を組み合わせて江戸前寿司のコースにしようと思い付いたんです」と平井さんは言います。私たちは多くの野菜と寿司が組み合わせ可能なことを実際に確かめました。鮨波残の野菜寿司コースを体験すると、日本の野菜の美味しさと隠れた可能性に驚かされるでしょう。
「もちろん、野菜がメインの寿司ですから、ビーガンやベジタリアンの方にもお召し上がりいただけます。カスタマイズも簡単にできますし、いろいろなものをご注文いただけるので、グループでのご利用にも便利です」と平井さんは胸を張ります。
日本の野菜の食材としての可能性と万能性を知ることは、日本文化の根底にある季節感を体験することでもありました。
四季を大切にする精神は日本文化に深く根付いています。古来より日本では四季を題材とした詩歌が詠まれ、平安時代には貴族が春に桜を愛でる「花見」も行われるようになりました。茶道、浮世絵、陶芸など、さまざまな芸術にも影響を与えたように、季節感へのこだわりは、料理を含む日本文化のあらゆる側面に見られます。
鮨波残の「野菜江戸前寿司コース」は、このような日本文化の重要な側面を体現しており、その日のコースのために厳選された新鮮で美味しい野菜を通して、四季の移ろいを楽しみながら日本の自然の恵みを感じることができます。
意外な食材の組み合わせ
最高の料理を提供するために、平井さんは旬の食材を厳選して仕入れ、それに合わせてメニューをアレンジするだけでなく、3県3銘柄のお米、3種類のお酢、有機醤油とみりんなどの調味料も自ら厳選しています。そのこだわりにより、寿司は更に味わい深く、最後の一口までもっと食べたいと思わせてくれるものに仕上がっています。
平井さんは素晴らしい食材をベースに、独創的な試みを行い、意外な組み合わせを生み出します。平井さんは何ヶ月も前からレシピを考えるのではなく、その場でアイデアを試し、その瞬間を信じることが多いようです。 「アイデアがうまくいかなかったものもありますが、また次のアイデアを考えるだけです」と笑います。このえごまの葉包みもトライアンドエラーの結果生まれたメニューです。 「最終的には、えごまの葉を茹でて風味を抑えることにしました。えごまが好きな人もいれば嫌いな人もいるので」と平井さんは言います。
平井さんの江戸前寿司の独創性は、最初に出された一品からすぐに感じられました。それは今まで食べたどの寿司とも違う味でした。まず平井さんが手際よく巻いて出してくれたのは「マグロとハーブの巻物」と「野菜の巻物」。一つ目は、食用ハーブと花が口の中で独特の香りを放ち、さまざまな味が楽しめます。もう一つは、レンコンやアワビタケなど旬の食材をミックスしたもので、噛むたびに異なる食感と後味を楽しめました。
このコースの前菜では、平井さんは、馴染みのある料理を斬新にアレンジしています。特にロールキャベツには驚かされました。「これが握り寿司をお出しする前の最後の前菜です」と、おいしそうな皿が目の前に置かれました。
ロールキャベツを切ってみると、香ばしいサバがたっぷり入っていて、添えられたウニソースのまろやかな甘みとのコントラストが絶妙です。ロールキャベツの最後の一口を食べていると、平井さんが残ったソースで別の見事な料理を作って驚かせてくれました。お皿の中央にシャリをのせると和風リゾットの出来上がり。ウニの優しいクリーミーさが、少し酸味のある赤酢入りのご飯を引き立て、今回のコースの中で最も気に入った一品となりました。
江戸前寿司を通じて客とつながる
リゾットをきれいに食べ終えると、メインコースの始まりです。「軍艦巻き」 のために丁寧に薄く切られた生のイカは、バターのように濃厚でまろやかな味わいです。ところで平井さんは何がきっかけでこの大変な寿司の世界に入り、何年もの厳しい修行を経て、このような高い技術を身に付けたのでしょうか。
目の前で華やかな野菜握りを作っている平井さんは、実は18年前に和食の板前としてキャリアをスタートし、その後寿司に惹かれて東京にあるミシュランの星を獲得した有名な江戸前寿司店で修行していたそうです。平井さんは寿司への興味について、「和食では厨房で働くだけで、お客さんと接することはありませんが、お客さんの反応を見たり聞いたりしてつながりを持ちたいと思っていました。それが寿司職人になった理由です」と語ります。
こうした話をしながら、握る鮨の一品一品には、平井さんの寿司職人としての情熱が込められていました。日本の野菜の鮮やかな色彩を生かし、目を引くように盛り付けられた寿司は、寿司の新たなる一面を客に伝えています。「しいたけと砂肝の握り」 と 「芽ネギとバフンウニの握り」 は、対照的な味わいが魅力です。どちらの寿司もとても贅沢で、上品な甘みとシャープでクリアな味わいが絶妙に調和しています。
この日いただいたコースの中でも特にユニークだったのが「トマトとムラサキウニの握り」です。特にトマトの調理法には驚きました。とても薄くスライスされていて、一見するとマグロの握りのようでした。塩をふったこの握りは、トマトスライスの下にはさまれたウニのおかげで絶妙な柔らかさでした。
コースの締めくくりとして、「トロやノドグロなど、こってりしたもので締めましょう」と、平井さんは新鮮な魚を2種類選んでくれました。驚くほど柔らかく、上品な味わいが特徴で、お客さんからも人気があるとのことです。大将のお勧めで、最後の握り2貫は「炙り」で出されました。最後の一口が口の中で蕩けたところで、鮨波残での食体験はグランドフィナーレを迎えました。
平井さんに自身の経歴の話、江戸前寿司の複雑で魅力的な世界について説明していただき、コースの締めくくりにぴったりの寿司を選んでくれたおかげで、今回の食事が一層特別なものになりました。平井さんにとって、お客さんの顔が直接見られること、料理を褒めてもらえることが一番うれしいことだと言います。 私たちにとっても、そうしたつながりのひと時によって、鮨波残での時間が最高のものになりました。
江戸前寿司本来の味を引き立てる意外な飲み物とのペアリング
予想に違わず、料理と共に提供される飲み物も一般的なものではありませんでした。 メニューに合わせて出されるさまざまな種類のお茶は「茶藝師」がセレクトしたもの。この日は「岩茶」が出されました。これは中国産の烏龍茶で、山間の岩場にしか生育しないこのお茶は、まろやかで素朴な味わいが江戸前寿司によく合います。
食事と一緒にお酒を楽しみたい人は、定番の日本酒もいいですが、珍しいテキーラを選んでみるのもおすすめです。鮨波残のユニークな組み合わせをできるだけ多く体験したいと思っていたので、どのお酒がいいか平井さんにおすすめを聞いてみました。平井さんが自ら選んでくれたテキーラは、蜂蜜のような甘い香りが特徴で、鮨波残の料理にぴったりでした。
安心して寿司文化を堪能できる高級料理店
鮨波残の「野菜江戸前寿司コース」は一品一品が素晴らしいもので、食事が終わる頃には私たちはこのスタイルの寿司にすっかり魅了されていました。今までで最高の寿司体験の一つだと確信しています。
料理だけでなく、お店の雰囲気も素晴らしかったです。鮨波残は伝統的な上品さがあるにもかかわらず、平井さんのおかげで私たちは本当にくつろぐことができました。そのようなリラックスした雰囲気を作り出すために、グループとグループの間に30分の間をあけ、可能な限りお客は最大6名様までとし、グループ間には必ず空席を作るようにしているとのことです。予約も簡単で、安心してコースを楽しむことができました。
お客さんに好きなように味わってほしいとの思いから、平井さんは寿司の食べ方について特に言及することはないと言います。 「寿司は職人がお客さんの目の前で握る料理なので、お客さんは料理が完成しているのか、職人がまだ手を加えるのか、醤油をつけるのかなどわからないことがあるかもしれません。 もちろん質問があれば喜んでお答えします。」
高級寿司店に行くのは初めてでしたが、平井さんは、鮨波残では特別なマナーは必要ないと言います。ルールにこだわらず、お客さんに寿司を楽しんでもらうことが目的だからです。今後の抱負について尋ねると、平井さんは「最終的な目標は、誰もがリラックスして楽しみながら、自分のペースで寿司を食べ、深く味わっていただける場所を作ることです」と笑顔で答えてくれました。
寿司のユニークな楽しみ方:鮨 波残の「野菜江戸前寿司コース」を食す
日本で本格的な寿司体験をしたいのなら、鮨波残の贅沢な野菜寿司コースを「Wabunka」で予約してみてはいかがでしょうか。何百年もの伝統を誇る東京発祥の江戸前寿司と日本の野菜の魅力を堪能してください。一生に一度の食体験となることでしょう。
*この記事を掲載して間もなく、鮨 波残は残念ながらこの「野菜江戸前寿司コース」の提供を終了しました。現在も通常の江戸前寿司メニューは提供しており、英語で予約できる寿司作り体験も開催中です。
Wabunkaとは
今回の記事で紹介した体験は「Wabunka」のウェブサイトを通じて予約しました。このサイトは、訪日外国人観光客向けに、茶道、華道、寿司、和菓子、金継ぎ (金で椀を補修する技法) など様々な日本文化体験コースを英語で紹介しています。本物の良質な日本文化を体験したいなら、ぜひチェックしてみてください。
ウェブサイト(英語): Wabunka
※この記事は、Wabunkaから無償で提供していただいた体験をもとに書かれていますが、書かれている感想などはすべてライター個人のものです。
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