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コーヒーとアートを通して交流を育む!ヴォーン・アリソンさんとリエ・アリソンさんが語る地域コミュニティの作り方
その国に慣れ親しむ一番良い方法は、地元の人々を知ることです。このインタビューシリーズ「People of Japan」では、ビジネス経営者、アーティスト、職人といった熱い思いを持った多才な人々を紹介することで、日本をさらに身近に感じていただけたらと思います。この記事では、東京都の北西に位置する東長崎地域にひっそりと佇む、コーヒーショップ「MIA MIA」とギャラリー「I AM」の熱意溢れるオーナーであるヴォーン・アリソンさんとリエ・アリソンさんを紹介します。
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ヴォーン・アリソンさんとリエ・アリソンさん:創造力に満ち溢れているカップル
ヴォーンさんはたくさんの仕事をしており、モデル、音楽プロデューサー、コーヒー愛好家など、複数の肩書を持っています。 「僕はいろいろな世界から影響を受け、多くのことを学びました」と彼は言います。彼は過去20年間、人間同士の関わりに焦点を当て、ライフスタイル雑誌に記事を書く傍ら、日本のコーヒー事業に15年間携わってきたと話してくれました。
さまざまな仕事の間でどのように時間のバランスを取っているのかと尋ねると、「バランス?取れてないですよ。」と彼は笑います。日本でのサードウェーブコーヒーの流行のさなかに来日した彼は、日本各地のインディーズコーヒーショップを訪れるのに多くの時間を費やし、およそ1,000以上のショップに行ったそうです。 彼は、MIA MIAをオープンする以前から訪れたいコーヒーショップ、カフェ、ベーカリーをリストアップしていましたが、全てのお店を訪れることはできなかったと笑顔で話してくれました。「僕はいつも訪れたお店のバリスタに、他にどんなコーヒーショップがおすすめかと聞くので、リストは増えるばかりです。」
リエさんは建築家として10年以上の経験があり、現在も本業として建築事務所を経営しています。彼女は、人との出会いや出会った人々との会話によって、日々インスピレーションを得ています。「建築家はコミュニケーションの中心を担う存在です。関わる人たちとしっかりと会話をしてチームで協力し合うことが大切だと思います。」と彼女は語ってくれました。
ヴォーンさんもリエさんも東京出身ではないですが(ヴォーンさんはオーストラリア出身、リエさんは宮崎県出身)、彼らは東京近郊の静かな街に自分の居場所を見つけました。「東京には全てにおいて最高のものがあるんです。」とヴォーンさんは言います。「見る時間さえあればね。」
東長崎:アートな地域で見つけた、自分たちに合った場所
ヴォーンさんとリエさんにインタビューするために、私たちは趣がある個人経営の店が点在する小さな街、東長崎に来ました。東長崎に大規模なチェーン店は見あたりません。コーヒーショップを開くのに最適なエリアを見つけるために、実は、ヴォーンさんとリエさんは5年間探し続け、やっとこの街を見つけたのです。
東長崎が位置する豊島区西部の要町・長崎・千早地域は、昭和の初めから戦前にかけて、絵や彫刻を勉強する独身学生向けのアトリエ付借家群が形成され、アトリエ村と呼ばれていました。最盛期には100人を超える画家や彫刻家などの芸術家が住んでいたそうです。現在も残る、芸術家を歓迎する街の雰囲気に、ヴォーンさんは魅力を感じたのです。「この街には、楽器の演奏が許可されているアパートがたくさんあるので、多くの芸術家が住んでいたんだなあと分かるんですよ。」
ヴォーンさんとリエさんは、自分たちのクリエイティブな才能を活かして、地域社会とともにプロジェクトを始め、この街のアートな魅力の向上に貢献し続けています。 MIA MIAは楽しくて個性的な雰囲気のお店で、おいしいコーヒーときれいなデザインのグッズを販売しています。また、ギャラリーI AMでは、オーストラリアの芸術家の作品を展示して販売も行っています。リエさんは、ギャラリーに展示する芸術家の作品を厳選していて、メインの芸術家の展示は3ヶ月ごとに変わるそうです。
私たちがヴォーンさんとリエさんに初めて会った場所のは、彼らが「文化キオスク」と呼んでいるI AMでした。ヴォーンさんは、彼らが地域の人々と関わるためにI AMで始めたさまざまなプロジェクトを熱心に説明してくれました。
ギャラリーの正面には地元の子どもたちが管理を手伝ってくれている小さなコミュニティガーデンがあり、地元の高齢者の方がよく来てガーデニングのアイデアを教えてくれるとヴォーンさんは話していました。ギャラリーは地域のコンポスト(堆肥)ステーションとしても機能しています。ギャラリーの前と後ろにコンポストボックスがあります。「住民の方が堆肥にする物を持って来て、ご自身の庭で堆肥が必要になったらまたここに取りに来るのです。」とヴォーンさんはあちこちのコンポストスポットを指しながら説明してくれました。
ギャラリーの正面には、図書館として使われている小さなブックポストもあります。ヴォーンさんとリエさんは、みんなが同じ本を読み、共有してほしいと思っています。彼らはオープンな空間とコミュニケーションの取りやすいデザインで、若者から高齢者、さらにはペットまで、誰でも訪れやすい公共の場所場所を作りたいと考えていました!
地元のニーズに応える:コーヒーショップを開くためのインスピレーション
ヴォーンさんは、人々のコミュニケーションを促すとても優れた能力を持っていますが、東京では人とのコミュニケーションが困難だと感じる場合もあるそうです。「今、僕たちはオンラインが発達した世界に住んでいるので、人々と交流することがより重要です。僕たちは、そんな人と人との交流を少しでも刺激できたらなあと思っています。」彼は、人と人が交流していれば、悲しい雰囲気にはならない。常にどこかにつながりを持てるので、必要なときに誰かに頼れたり、気分を盛り上げてもらえたり、将来さまざまな場面で助け合うことができると考えています。「小さなことから、大きなことが生まれるんですよ。」と彼は言っていました。
ヴォーンさんとリエさんは、「オーストラリアのコーヒーショップにはフレンドリーなスタッフがいて、インディーズコーヒー文化が地域に根付く力があります。そのため、オーストラリアでは大規模なコーヒーチェーンでさえ生き残ることは困難なのです。」と話してくれました。一方、日本にも多くの小規模なインディーズコーヒーショップがありますが、オーストラリアのようなサービスを提供することができていないコーヒーチェーンばかりです。「日本では多くの人がチェーン店、コンビニエンスストア、自動販売機でコーヒーを買っています。」とヴォーンさんは言い、「これらのお店にはコミュニティがない。」ということを指摘しました。
「私たちは、オーストラリアのフレンドリーな雰囲気を日本で実現したかったのです。」とリエさんは言います。
MIA MIA:日本に住むオーストラリア人が生み出したシェルター
「Mia Mia」(mah-ya mah-yaと発音する)は、オーストラリアのアボリジニの言葉で「シェルター」を意味します。ヴォーンさんとリエさんが、オーストラリア中を旅していた時、友達や通行人が集まって「ただ居る」ことができる、伝統的な地元の木材で作られた小屋Mia Miaに立ち寄りました。その言葉の意味を聞いた時すぐに、彼らはそれを新しい店の名前しようと思ったそうです。
「人々と交流することがチャンスをもたらしてくれる」というヴォーンさんの信念の一例として、才能溢れるプロフェッショナルでもある彼らの友だちが、このコーヒーショップにさまざまな貢献をしてくれました。店のロゴはパイクデザインオフィスがデザインし、カップは陶芸家イイホシユミコさんのオリジナル作品です。
彼らの店は東長崎の街並みに溶け込んでいますが、この魅力的な空間はヴォーンさんとリエさんに迎え入れられ、元気をもらう地元の人々や観光客で賑わっています。お店は、訪れた人々がくつろげるようにデザインされ、冬でも窓やドアは常にオープンだとヴォーンさんは笑顔で話してくれました。
MIA MIAとI AMの建築には、リエさんの技術が大きく貢献しています。MIA MIAをリノベーションする際には、改装前の建物では開けられなかった窓を開けられる窓に交換したり、スタッフとお客さんが会話や交流をしやすいようにインテリアを構成したりして、できるだけオープンで風通しの良い店内を保つようにしました。リエさんは様々な場所で建築を行う際に、それぞれの要素(例えば扉の位置調整など)が実生活でしっかり機能するかをMIA MIAやI AMで実際に試したりしているそうです。
エスプレッソマシンの配置も慎重に検討され、スタッフとお客さんが対話しやすく、店内の誰も疎外感を味わわないよう最適な位置に設置しました。
空間デザインについて、リエさんは「バランスが大事です。あまりファッショナブルにこだわりすぎてはいけません。それでは、お客様が入りづらいでしょう。人は親しみやすい空間の方がくつろぐことができるのです。」と語ります。彼女の細部へのこだわりは、実にうまく機能しています。MIA MIAの内装と外装の両方が新鮮でアートな要素を持ちながら、お客さんが店の中でも外でもゆっくりと時間を過ごせる雰囲気を保っています。
人々がくつろげるように特別な配慮を
私たちがMIA MIAを訪れている間、ヴォーンさんとリエさんは、常連から一見さんまで、満面の笑みと豊かな包容力でお客さんを歓迎し、交流していました。ヴォーンさんは店の前を通る地元の人々を見ては、元気に挨拶し、冗談を言っています。リエさんは店の周りに佇んでいるお客様の会話に入って話をしています。
リエさんは、MIA MIAで働いているスタッフが持っていてほしい考えについて話してくれました。スタッフが日本式の顧客サービスのルールに縛られるのではなく、その代わりスタッフ一人ひとりが自分らしく行動し、お客様と自由に交流することをリエさんたちは望んでいます。ヴォーンさんとリエさんは、お客さんに寛いで話してもらいやすいリラックスした雰囲気を作るようスタッフに促しています。
「常連客をお店に導いてくれるのは、人のあたたかさですから。」とヴォーンさんは、ほぼ毎日訪れる地元の常連客を見送りながら言いました。「コーヒーショップが人々の日常生活の一部になってほしいのです。良い心と精神があれば、小さなお店にも勝算はあるでしょう。」
コミュニティの一員であること:コーヒーショップに求められる要素
ヴォーンさんとリエさんはどちらもホスピタリティあふれる環境で育ち、それはお客さんとのやりとりやお店の経営の仕方に表れています。 「お客様が何を必要としているかをお客様自身が認識する前に提供することで、お客様のニーズを満たさなくてはなりません。」とヴォーンさんは私たちに言います。
ヴォーンさんはもともとオーストラリア出身で、オーストラリアには、素晴らしいコーヒーと同じくらい素晴らしいサービスがあります。ヴォーンさんの両親は自分でレストランを経営しており、彼が若い頃は、両親のレストランでアルバイトをしていました。 「僕の人生には常にコーヒーがありました。」と彼は言います。「エスプレッソマシンは僕のおもちゃでした。」
一方、リエさんは居酒屋を経営する家庭で育ちました。このことが彼女の性格を形作るのに大きな役割を果たしていると彼女は感じています。というのも、彼女は静かな場所よりも賑やかな場所の方が快適に感じられるからです。いま彼女は、建築家としても、自分が人と人とのコミュニケーションの一助になると思っています。「建築は、空間を作り、人々をつなぐことができるので、とても面白い仕事です。」と彼女は語ってくれました。
ヴォーンさんもリエさんも、コーヒーショップの良し悪しを決める1つの基準は、バリスタがお店の周辺地域をどれだけ熟知しているかだと指摘します。 「旅行する時はいつでもコーヒーショップに立ち寄って、バリスタにおすすめの場所を聞いています。」とリエさんは言います。ヴォーンさんはまた、お店の雰囲気を把握するために、彼がスタッフやお客様と話すことを大切にしているとも語りました。
彼らは、MIA MIAが東長崎の深い情報や街の魅力を発信できるお店になることを熱望しており、ある日本のアーティストに東長崎地区の観光マップを描いてもらうよう依頼しました。 この観光マップはMIA MIAのドアに張り出されています。観光しながらマップを使いたい人や、東長崎でかわいいお土産を買いたい人のためにお店で観光マップのコピーを販売しています。「僕は、ただコーヒーを飲みに来て、そのあとすぐに駅に戻って電車に乗るなんてことはしてほしくないのです。東長崎周辺にどんなところがあるのか探検していってもらいたいのです。」とヴォーンさんは言います。
ヴォーンさんとリエさんがあなたの笑顔を保証します
楽しいおしゃべりとおいしいコーヒーの後、私たちがお別れを言う時が来ました。私たちは、心を込めて見送っていただき、コーヒーショップのおしゃべりの声が遠ざかる間、私たちはMIA MIAで過ごした素晴らしい時間について楽しく語り合いました。MIA MIAは、夜にお店を訪れたい人のために、夕方からはバーに変わります。東長崎を訪れ、おいしいコーヒーと共に楽しいおしゃべりがしたい時は、MIA MIAへヴォーンさんとリエさんに会いに行ってください!
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