• 新潟
  • 日本文化

新潟:知られざるアニメ・マンガの聖地

アニメやマンガ文化はマニアックな趣味から世界的なブームへと発展し、本場で楽しむために日本を訪れる旅行者が増えています。多くの人が秋葉原に足を運ぶ一方で、日本の北西部に位置する雪国・新潟も、実は見逃せない重要なスポットなのです。日本を代表する人気マンガ家の高橋留美子や、ギャグマンガ界の巨匠・赤塚不二夫など、著名なクリエイターたちが青春時代を過ごした新潟は、熱心なファンの間で密かな聖地となっています。新潟のアニメ・マンガ文化やその魅力をもっと知りたいと思い、新潟市マンガ・アニメ情報館を訪れてみました。

tsunaguJapanライターお薦め観光コンテンツはこちら!

この記事にはアフィリエイトリンクが含まれている場合があります。アフィリエイトリンクを経由して購入された場合、あなたからの追加費用なしで私たちはコミッションを得る可能性があります。

日本のアニメ・マンガ文化に迫る

アニメとマンガは、世界中で大ブームを巻き起こし、数兆円規模の市場へと成長しました。これまで数十年にわたり、日本のポップカルチャーの中心的存在であり続けています。「アニメ」とは日本製のアニメーションのことを指します(日本では動画化されたものを「アニメ」ということも多い)。一方、「マンガ」は日本製のコミックを指します。これらの媒体には熱心なファンが多く、日本のビデオゲーム、ライトノベル、フィギュアなどのコレクターズアイテム、さらにはコスプレやアイドルの華やかな世界とも密接に関わっています。

日本では、アニメもマンガも非常に真剣に受け止められており、熱心なファンの中には、その情熱を表現するために多額のお金を使う人も少なくありません。こうした熱心なファンを指して「オタク」という言葉が使われますが、この言葉は今や海外でも広く知られています。ただし、日本では「オタク」という言葉が英語の「nerd(ナード)」に近い否定的なニュアンスを含むこともありますので、日本でその言葉を使う際は、少し注意が必要かもしれません。

日本でアニメ・マンガ文化を満喫する

マンガ喫茶からアニメミュージアムまで、日本にはアニメ・マンガ文化を楽しめるスポットがたくさんあります。東京の秋葉原、特に秋葉原電気街は、フィギュアやDVD、雑誌、トレーディングカードなど、様々なグッズを扱う専門店が立ち並び、熱心なファンで賑わっています。女性ファンに人気なのが池袋の乙女ロード、また屋内でゆっくりショッピングを楽しみたい方には中野ブロードウェイがおすすめです。東京には、杉並アニメーションミュージアム、東京アニメセンター、東映アニメーションミュージアム、そして人気の高い三鷹の森ジブリ美術館 など、アニメやマンガについて学べる博物館も充実しています。

東京以外にも、日本各地にアニメやマンガのミュージアムがたくさんあります。兵庫県の手塚治虫記念館、京都市の京都国際マンガミュージアム、愛知県のジブリパーク、福岡県の北九州市漫画ミュージアム、新潟市の新潟市マンガ・アニメ情報館などが人気です。これらの施設では、アニメやマンガの文化について深く学べるだけでなく、有名な作品のインスピレーション源となった地元の風景や文化についても知ることができます。

日本におけるアニメとマンガの歴史

アニメとマンガは日本文化に深く根付いており、その歴史は非常に長いものです。実は、12~13世紀に描かれた「鳥獣戯画(ちょうじゅうぎが)」という動物を擬人化した絵巻物が、日本最古のマンガだと主張する歴史家もいるほどです。

しかし、現代のマンガの起源は江戸時代(1603~1868年)初期の「浮世絵」に見ることができます。浮世絵には現代のマンガに通じる躍動感とリアリズムがあり、手頃な価格だったため大変人気がありました。

江戸時代末期には印刷技術が進歩し、本格的な漫画本が登場します。1862年に在日英国人が発行した風刺漫画雑誌「ジャパンパンチ」は、日本で作られた初期のマンガの一つとされています。ただし、マンガが様々なジャンルに広がったのは、第二次世界大戦後のことです。

一方、アニメの歴史は比較的新しく、20世紀初頭に始まります。日本初の本格的なアニメは、1917年1月に下川凹天氏によって制作されたと言われています。残念ながら、この作品は現存していません。現存する日本最古のアニメは、その半年後に公開された『なまくら刀』です。驚くべきことに、この歴史的な作品は2007年に地元の骨董市で再発見されたのです。

戦後、日本のアニメ業界は大きな転換期を迎えます。1950年にディズニーの『白雪姫』が日本で公開されたことで、アニメーションの可能性が広く認識されるようになりました。1956年には、日本初の商業アニメスタジオとして東映動画(現・東映アニメーション)が設立されます。そして1958年、日本初のフルカラー長編アニメ映画『白蛇伝』が公開され、大きな話題を呼びました。

さらに1963年、日本のアニメ史に新たな1ページが加わります。手塚治虫による『鉄腕アトム』が、日本初の連続テレビアニメシリーズとして放送を開始したのです。当時としては画期的な、毎週30分のエピソード形式で制作されました。アニメ制作には多額の費用がかかります。そこで手塚は、フレームレートを下げる「リミテッドアニメーション」という手法を採用し、現在のアニメの特徴的な動きや表現に大きな影響を与えました。

その後の数十年間、日本のアニメは飛躍的な発展を遂げました。1979年に放送を開始した『機動戦士ガンダム』は「メカ」ジャンルの先駆けとなりました。1984年には宮崎駿監督の『風の谷のナウシカ』が公開され、後にスタジオジブリを設立した宮崎監督は世界中で人気を博すことになります。他にも、アニメ界に大きな影響を与えた作品がたくさんあります。1984年に漫画として連載を開始した『ドラゴンボール』、少女漫画の代表作となった『美少女戦士セーラームーン』、そして世界中にファンを持ち、2023年にNetflixで実写ドラマ化された『ONE PIECE』などが挙げられます。

現在、日本のアニメ・マンガ産業は年間数百タイトルを生み出す一大産業となり、その勢いは衰える気配がありません。

tsunaguJapanライターお薦め観光コンテンツはこちら!

新潟:著名なアニメ・マンガクリエイターのふるさと

多くの人にとって、新潟といえばパウダースノーのスキー場や広大な田んぼを思い浮かべるかもしれません(新潟は日本最大の米の産地です)。実は、新潟はアニメとマンガの文化においても重要な地位を占めているのです。この地域には、多くの影響力のあるクリエイターがルーツを持っています。例えばマンガ家の高橋留美子 (らんま 1/2、犬夜叉)、赤塚不二夫 (おそ松くん)、小畑健 (デスノート)、そして最近のスターである赤坂アカ (推しの子) など、日本を代表する漫画家たちが新潟出身なのです。

Klook.com

新潟市マンガ・アニメ情報館:アニメとマンガ文化の発信地

新潟駅から歩いてすぐ、信濃川のほとりに新潟市マンガ・アニメ情報館があります。2013年の開館以来、この施設は地元出身のクリエイターの作品を展示する体験型展示や企画展を通じて、新潟のアニメとマンガの文化を紹介してきました。

館内に入ると、新潟の名物であるチューリップ畑と笹団子を擬人化した、愛らしいマスコットキャラクター「花野古町」と「笹団五郎」が出迎えてくれます。館内では、絵コンテ、アニメ、声優に挑戦したり、地元のキャラクターが登場する楽しいゲームを楽しんだりできます。多言語対応のタッチパネルでマンガ ・アニメ関係者の生涯や作品を紹介するほか、有名なアーティストのオリジナルイラストのギャラリーで、印刷物では失われがちな才能を披露しています。

新潟市マンガ・アニメ情報館の楽しみ方

この施設は規模こそ大きくありませんが、15のコーナーがあり、それぞれがアニメ・マンガ文化の様々な側面を紹介しています。私たちは懐かしさもあって、まず『犬夜叉』など子供の頃に親しんだ作品の生みの親である高橋留美子をはじめとする、新潟出身のクリエイターについて学ぶことから始めました。

次に、ギャグマンガの巨匠として知られる赤塚不二夫について学びました。最近では代表作『おそ松くん』を現代風にアレンジした『おそ松さん』が人気を博しています。赤塚不二夫の作品は明るい内容が多いのですが、実は日本占領下の満州で生まれ、その後新潟に移住するという波乱に満ちた生い立ちだったことを知り、驚きました。

地元のクリエイターについて学んだ後は、体験型の展示を楽しみました。中でも一番の目玉は「声優体験」でした。英語版はありませんが、日本語が話せる方なら新潟にゆかりのある2つの有名アニメのシーンに自分の声を吹き替えられます。まずプロの声優による本物の音声を聞き、次に自分で挑戦。最後にシンクロ率で順位がつけられます。自分の声を聞き返すと、プロの声優さんの才能に改めて感動しました。

その後、テンポの速い「ラムちゃんと鬼ごっこ」というゲームに挑戦。ラムちゃんの放つ稲妻や様々な障害物をかわしながら、跳んだりしゃがんだり。楽しみながら体を動かし、意外と良い運動になりました。

一息つくために、アニメ『わすれなぐも』の制作過程を紹介した短いドキュメンタリーをいくつか見ました。脚本、絵コンテ、美術、サウンドデザインなど、アニメ制作の様々な段階を学ぶことができました。次に、アニメーションの基礎を学べるコーナーへ。ゾートロープという装置を回して、静止画が動き出す仕組みを体験しました。さらに、自分でマンガのページやアニメのシーンを作る体験もできました。

最後に、館のマスコットキャラクターたちが新潟市を舞台に繰り広げる奇想天外な冒険を描いたオリジナルアニメを鑑賞して、見学を終えました。

新潟市マンガ・アニメ情報館では、個々のクリエイターにスポットを当てた企画展も開催しています。私たちが訪れた時は「赤坂アカの世界」展が開催中でした。『かぐや様は告らせたい』や『【推しの子】』など、赤坂氏の作品のイラストや原画が展示されていました。赤坂氏は新潟市から海を隔てた佐渡出身で、彼の漫画とそのアニメ化作品は世界的な人気を博し、新潟のアニメ・マンガ文化に新たな一頁を加えています。

年に6回ほど企画展が開催されるので、訪れる時期によって楽しめる展示が変わります。過去には『東京卍リベンジャーズ 』『魔法少女まどか☆マギカ』『トライガン』『鋼の錬金術師』『ジョジョの奇妙な冒険』など、人気作品の展示が行われました。これらの展示では作品の魅力だけでなく、制作の裏側や作者の思いなども紹介され、作品が生まれるまでの創作過程を知ることができます。

なぜ新潟でアニメ・マンガ文化が花開いたのか?

日本の中でも特に目立つ地域ではない新潟が、どのようにしてアニメ・マンガ文化の一大拠点となったのでしょうか?新潟市マンガ・アニメ情報館の小池利春館長は、その答えが新潟の特産品である「米」と「雪」に関係しているのではないかと考えています。

「新潟は豪雪地帯で、冬の天候が厳しいんです。そのため、新潟出身の第一世代の漫画家たちは、雪に閉ざされた室内で過ごす時間が長く、その暇つぶしとして絵を描くことが多かったんですね。」

さらに、小池館長はこう続けます。「また、新潟には過酷な仕事の稲作文化があります。そのため、新潟の人々は粘り強さで知られているんです。多くの地元出身の漫画家たちは、新潟でその粘り強さと技術を磨いた後、東京に出て成功を収めました。」

こうした先駆者たちの成功が次世代に刺激を与え、「ガタケット」と呼ばれる新潟コミックマーケットが40年以上も続いています。ここでは、地元のクリエイターたちが自作のマンガ(同人誌)を販売します。さらに、1998年には全国初となる「にいがたマンガ大賞」が始まりました。また、「にいがたアニメ・マンガフェスティバル(がたふぇす)」では、声優のライブやコスプレパレードなど様々なイベントが行われ、日本中からファンが集まっています。

新潟がアニメ・マンガの聖地として知られるようになると、この分野に特化した専門学校も多く開校されました。そこではアニメーターや漫画家 を目指す若者たちに、技術を磨く場を提供しています。

tsunaguJapanライターお薦め観光コンテンツはこちら!

新潟のアニメとマンガ文化の未来

小池館長は、新潟のアニメとマンガ文化はさらに発展していくと確信しています。「私たちは新潟をアニメ・マンガ文化の中心地とするために、長年努力を重ねてきました。その結果、多くのアニメ制作会社が新潟に拠点を置き、地元の人材を育成するようになりました」と小池館長は語ります。

新潟のアニメ・マンガ文化をさらに世界に発信するため、2023年には「新潟国際アニメーション映画祭」が始まりました。世界中のアニメーターによる作品が上映され、新潟を世界的なアニメの聖地として位置づけることを目指しています。

新潟市マンガ・アニメ情報館での仕事を通じて、小池館長は海外でのアニメやマンガの人気の高まりも実感しているそうです。「以前は外国からの来館者は特定の時期に集中していましたが、今では年間を通じて常にいらっしゃいます。 」

小池館長にとって、この変化は若い頃の経験と比べると大きな違いを感じるそうです。ヨーロッパでマンガのイラストを教えていた時のことを振り返り、こう語ります。「当時は『なぜキャラクターの目がこんなに大きいのか』といった質問をよく受けました。マンガは奇妙で大げさな表現スタイルだと見られていて、その独特さが面白がられていました。でも今では、マンガやアニメは日常的な娯楽の一つになっていますね。」

小池館長は、テクノロジーの進歩がアニメのさらなる発展を後押しすると考えています。「日本では昔から個人でマンガを出版するのは比較的容易でしたが、アニメ制作は大規模なチームが必要でした。しかし、新しいソフトウェアやストリーミングサービスの登場で、個人でもアニメを作って公開することが格段に簡単になりました。」

小池館長は、アニメ・マンガ業界には多くのチャンスがあると考えています。「出版社がデジタルマンガを出版するようになり、以前は雑誌一冊に20人程度の作家さんがいれば十分でしたが、今はそれでは足りません。需要が大きく拡大しているので、日本のアニメ・マンガ業界では新人クリエイターにもたくさんのチャンスがあると思います。」

新潟で日本のアニメ・マンガ文化を楽しめるその他のスポット

新潟市マンガ・アニメ情報館を見学した後に訪れるべき、小池館長おすすめの場所をご紹介します。

・新潟市マンガの家

新潟市マンガの家は、新潟市マンガ・アニメ情報館から徒歩20分ほどの場所にあります。新潟の歴史ある花街近くの路地に佇む、趣のある建物です。

この施設は入場無料で、約1万冊のマンガを自由に読むことができます。また、赤塚不二夫など、地元出身の人気ギャグマンガ家に関する華やかな展示もあり、写真撮影スポットとしても人気です。マンガ家を目指す方には、毎日開催される無料ワークショップ「まんがのいっぽ」がおすすめです。プロのマンガ家からマンガの基礎を学べる貴重な機会で、予約不要です。

古町5番町商店街

古町商店街は、新潟市の歴史ある古町地区にある屋根付きの商店街です。新潟市マンガの家の近くには、新潟県出身の漫画家・水島新司の野球漫画『ドカベン』の銅像が並んでいます。『ドカベン』は海外ではあまり知られていませんが、キャラクターたちのダイナミックなポーズは、マンガファンでなくても写真に収める価値があります!

さらに少し進むと、日本アニメ・マンガ専門学校があります。ここは観光施設ではありませんが、建物の外観には次世代のクリエイターたちによる色鮮やかなイラストが描かれており、とても目を引きます。

新潟市観光循環バス

新潟市内循環バスは、歴史的な建物から人気の「みなとのマルシェ・ピアBandai」まで、新潟市の主な見どころを巡っています。バスの1台には、新潟出身の漫画家・小林まことの作品『ホワッツマイケル』に登場するトラ猫のイラストが描かれています。

日本の地方に根付くアニメ・マンガ文化

秋葉原のような定番スポットに加えて、アニメ・マンガ文化の源流を探るには、地方都市への旅をおすすめします。多くのアニメやマンガのクリエイターを輩出し、新潟市マンガ・アニメ情報館などの施設がある新潟は、東京の次の訪問先として最適です。体験型の展示やマンガ図書館、オタクイベントなど、日本のアニメやマンガ文化のさまざまな側面に触れる充実した体験ができますよ。

この記事に掲載されている情報は、公開時点のものです。

ライター紹介

Steve
Steve Csorgo
オーストラリアのメルボルンで生まれ育ち、現在は新潟市在住。趣味は、地酒を見つけること、読書、そしてできるだけ多くの日本国内を旅すること。日本の好きなものは、温泉、史跡、手つかずの自然。伝統工芸品、風変わりだが魅力的な町、興味深い地元の話などを書くのが好き。
  • tsunaguJapanライターお薦め観光コンテンツはこちら!